「安野光雅の世界」展 2
安野光雅「ふしぎなえ」より
先日行った「安野光雅の世界」展での出来事。
彼の作品の中で”もりのえほん”という、森の木々が描かれている中にどうぶつたちが隠れているといったモノがあります。
展示会場ではその作品が10点ほどあり、1点ずつジッと見ておのおの探すわけですが、観に来ている人は多くて1点につき6〜7人くらいの人が見ているような状況でした。
「あの・・、だれか・・、ねずみは・・・どこにいるのでしょうか・・。」
1人の70代らしき男性がぼそっと口に出しました。
まわりで同じ絵を観ていた見知らぬ人達は軽く顔を見合わせて一斉に前のめりになって絵を見始めました。しばらくすると、
「ここに。」
ねずみを探し当てた人が、人差し指を遠慮がちに絵の中を指しました。
知らない人同士が軽く微笑み合い、空気が和みました。
そしてそのまま次の絵に移動。
暫くまた絵の中に隠された動物を探し始め、5つあるはずのところ4つほど見つけたあたりで、今度は私の隣の女性が口を開きました。
「カモシカはどこにいるのでしょう・・。」
またその場に居合わせた見知らぬ人たちは一斉に絵を見つめ探し始めました。
「あっ!ここ!」
元気良く教えてくれた小学生。声は出さないけれど、皆が安堵の様子。
そんな感じで5枚ほど同じメンバーで、安野光雅の”もりのえ”を観たのでした。
とっても不思議な時間。
ミョーな一体感と正解がわかったスッキリ感を共有し、次の絵に移っていったのでした。
私はそれを少し後ろで傍観していたのだけれど、そんな人たちを見ていたら、これこそ安野光雅の描く絵の中の人達の様で、美術館では珍しい光景でしたがなんだか楽しくなっちゃいました。
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